物議を醸した暴露本?ダン池田「芸能界本日モ反省ノ色ナシ」を今読んで思うこと

今も昔も芸能人による「暴露本」と言われるようなものは存在しますね。今回のコラムでは、昭和の暴露本の中でもとりわけ有名な、ダン池田「芸能界本日モ反省ノ色ナシ」の概要と、読んでみて感じたことについてまとめてみました。

書籍の概要

著者のダン池田さんは、フジテレビ系「夜のヒットスタジオ」でバックバンドを務めていた「ダン池田とニューブリード」のバンドマスター。夜ヒットで指揮をする姿を見たことがある人も多いと思います。そのダン池田さんが芸能界の裏も表も見てきて感じたことについてしたためてきた日記を、50歳の時に書籍にしたものがこの本。

もともとが日記であることもあって、歌手などの実名も出しながら芸能界に対する痛烈批判をぶちかましたことにより暴露本と、70万部を売り上げる大ヒット作となりました。

内容はどんな事が書いてある?

裏表紙には、書籍を紹介するこんな文章が載っています。

レコード大賞を辞退する歌手が続出するのは、いったいぜんたい、どんな理由があるのか?かつて私たちに生きる夢と希望を与えてくれた歌謡曲が、近ごろなぜ心に響かなくなってしまったのか?そこには、芸能界の腐敗と堕落があるにちがいない。その芸能界に30年間生きてきた著者=ダン池田は、ご存じニューブリードのバンドマスター。芸能界の裏も表も、上も下も、内も外も、そして裏の裏も、すべてを知り尽くした、文字どおりの生き辞引的存在である。その彼が、実はずっと日記をつけていたのだ。そこには、芸能界の内側が綿々と、そして克明に綴られている。本書は、その日記を、過去一年間さかのぼって編集したものである。芸能界にまつわるいろいろな疑問は、これを読めばすべて氷解するはずだ。芸能界をパニックにおとしいれる衝撃の書である。

ここにあるとおり、本に書いてある内容としては、ダン池田さんのバンドマスターとしての仕事のことから、今日はディレクターにこんなことを言われたという愚痴や、「これだから芸能界はダメなんだ」という批判的な内容、ダン池田さんご自身の恋愛の話、過去の回想など。ダン池田さんの周りを取り巻くあらゆる出来事について書いてあります。

リアリティにあふれた手記としての「芸能界本日モ反省ノ色ナシ」

とくに注目したいのは、この本は1984年10月〜1985年9月までの1年間の日記が掲載されているため、当然この時期に起こった出来事がリアルタイムの出来事として書いてあるということ。私自身が後追い世代であるため、史実としては知っていながらもその空気感は想像するしかない出来事について知れる点は興味深いです。以下、いくつか抜粋します。

1984年12月31日

都はるみが紅白歌合戦の大トリを務めて舞台を引退した。
紅白始まって以来のアンコールに涙で応えられず、出場歌手全員の大合唱の中で、歌手生活20年の幕を閉じた。ご苦労さん、はるみちゃん。
久しぶりの紅白歌合戦の盛り上がり。しかし、俺には何か素直に感動できないものがあった。
ああ、今年は都はるみでいける、と視聴率の低下に悩むNHKが考えた作戦のひとつだろうと思われる。ジリ貧を一挙に挽回するためのかっこうの材料だからだ。きっと視聴率も良かったはずだ。
(中略)
しかし、それにしても、いやぁ驚いた、生方さん。まさか、あんな緊張の一瞬に「ミソラ……」って言ってしまったんだから。
せっかく鈴木さん(白組司会のアナウンサー)が紅白の舞台を盛り上げて、都はるみの引退セレモニーにふさわしく最高潮に達していたのに。
俺は生方さんをよく知っているだけに、自分のことのようにどきっとした。
まあ、人には失敗もある。生方さんの今後に期待しよう。左遷なんてないだろうと思うけれど。 
レコード大賞は五木ひろしの「長良川艶歌」。新人賞は岡田有希子。

p93~95

紅白で起こったハプニングとして有名な「ミソラ事件」。上記の通り都はるみさんの引退ステージとなる紅白歌合戦のクライマックスにて、総合司会の生方アナが都はるみさんの名前を一瞬間違えてしまうという事件です。
これまではその話を耳にしても過去のハプニングとして「あちゃー(笑)」と捉えていただけでしたが、その日付の日記にてリアルタイムに語られているものを見ると、胸が痛くなりました。

ちなみにこの生方アナは翌年に大阪に異動、その年じゅうにNHKを退職したとのこと。左遷だったのかどうなのか、本当のところはわかりません。

1985年1月23日

松田聖子、郷ひろみとの破局記者会見。
(中略)
女が男をふるときっていうのは、もう変わりが見つかった時しかない。きっと聖子は新しい恋人がいるはずだ。それならそうと、はっきりいっちゃえばいいのに、とふと思う。どうせ、芸能界、くっついて離れての繰り返し。聖子もまた誰かと婚約発表をするだろうし、郷ひろみもまた誰かと結婚したりする。
そんなもんだ。騒ぐのはワイドショーと芸能週刊誌だけ。俺たちには何も関係ない。仕事、仕事。

1985年8月12日

日航機墜落。いやあ、びっくりした。九ちゃんが乗っていたという。あんな運勢の強い人が乗ってて墜ちるなんて。
まったくく信じられない。もしかしたら、運が下向きになっていんたのかもしれないな。
”芸能人が乗ってると飛行機が墜ちない”っていう俗説がある。スターというのは運がいい。強烈な運を持っていなければなれない人だから、その運の強い人と一緒に乗っていれば事故はないということから来てる。
(中略)
九ちゃんの冥福をただ祈るのみ。合掌。

p,214~215

率直な感想

だいたいどのような内容の本かおわかりいただけたでしょうか。。ここからは読んでみての率直な感想をお届けします。

おじさんの愚痴と生き様を描いたブログ

一冊よんでみての率直な感想としては、多分ここまで読んでくださった方もお気づきのように、 50代男性の愚痴ブログだなぁ、という感じです。女性を値踏みしたりするような描写もあり、現代だと人によっては受け付けられないであろうお下劣クソジジイっぷりが爆発している描写も多いのですが、そこにあるのは当時50歳のダン池田さんというひとりの男性の人生と生活。音楽という好きなはずの仕事をしながらもその理不尽さに直面し、苛立ち、苦悩し、自己嫌悪しながら生きている姿をそのまま描いたものであるという感じです。

生バンド好きは読んでいてつらい

ダン池田さんの周りで起こる出来事として当然「ニューブリード」の話はたくさん出てくるのですが、あまりにもその扱いの軽薄さ、給料の安さが何度も記されているので、バックバンド好きとしては心が痛くなります。

他にも、書かれているのが1980年代中盤という時期であり、ビッグバンドの存在意義にも翳りが見え始めた頃です。当時のことについて、このように語られています。

最近の音楽界を見まわすと、まわりがだんだん機械にうめられてきているみたいだ。エレクトリックなサウンド・コンピュータを使ったり、シンセサイザーだとか、愛情がない、感情がない音ばかり。
これからは、そういう無感情のエレクトリック・サウンドを発するロボットが演奏し、それに合わせて、いや操られて、歌手がこれも無感情に歌う、そんな音楽がもてはやされる時代になってしまいそうな気がする。

生演奏・生バンドを愛する人物のこのつぶやきは、時代によって必要とされるものが移り変わっていくのが世の理といえど、どこか虚しさを感じさせられます。

他の人の感想

「芸能界本日モ反省ノ色ナシ」を読んだ、他の人の感想も掲載します。ぜひ参考にしてみてください。

実際に読んでみると衝撃度はそれほどでもありません。暴露本というよりも、ダン池田の日常的な愚痴や悪口を綴った日記ですね。今で言うタレントのブログ本といったところですね。「冷やしたぬきうどん」にまで愚痴っているところが私は好きですね。
(中略)
芸能界の暴露本と考えると少し物足りないかもしれませんが、「80年代のブログ本」と考えると色々と味わい深かったり、当時の芸能界の知る資料としての価値はある本だと思います。

ダン池田の「芸能界本日モ反省ノ色ナシ」を読んでみた_ ぶら~りネット探訪

興味深いのはむしろ暴露内容より84~85年当時のビッグバンド事情で,電子楽器の台頭によって活躍の場をどんどん奪われ会社ののど自慢イベントや堀越高校の学芸会,果てはスーパーの開店イベントで軍艦マーチを吹かされたりすることまで余儀なくされていたという愚痴が続く。紅白や夜ヒットの伴奏を十数年も務めた名門バンドが・・・と衝撃を受けた。

『芸能界本日モ反省ノ色ナシ』|感想・レビュー – 読書メーター

また、暴露本収集家(そんなんあんのか)の吉田豪さんにとっての、「暴露本不動の2トップ」と推す2冊のうち1冊がこの本なのだとか。

 暴露本には“目的”があるものですが、この本は、「指揮者の自分をぞんざいに扱ったプロデューサーへの復讐」という、個人的な理由だけで出したもの。どうしようもないことしか書かれていないんだけど、邪気がなくて面白いんです。
(中略)
 暴露本を出したことで芸能界から干されてしまいましたが、本人はカラッとしていましたよ。

暴露本収集家・吉田豪氏が選ぶ「不動の2トップ」の中身|NEWSポストセブン

まとめ

総じて、1980年代中盤、まさに音楽の転換期でもある時代の中心にいた人物の貴重な手記としては遺していくべきものだなと感じました。一方でダン池田さんの個人的な恨みつらみ、一方的な悪口も多分にあると思うので、話半分で読める人、おもにダン池田さんの下半身事情をはじめとするお下品な内容にある程度耐えられる方は読んでみてもよいのではないでしょうか。

夢を壊されたくない人、このコラムの内容からある程度察して「あっ……」となった人は読まなくて良いと思います。とくに後追い世代は「見たいところだけを見ることができる」というメリットを享受できる特権があると思うので、苦手だなと思う方はわざわざ見る必要はないと思います。当時の空気感を少しでも知りたいな、というライトな気持ちで読めそうな方は、メルカリやヤフオク、Amazonにて今も100~1200円程度で購入できるので、手にとってみてはいかがでしょうか。

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