平成生まれ昭和育ちへのインタビュー【ヤングマスターの若き店主・ジョーさん】

昭和の音楽が好きな若者は、年を追うごとに増えています。SNS上には中学生や高校生がいることも、珍しくありません。でも、いったい彼らはどうして昭和の音楽を好きになったのか?そのきっかけや思いをインタビューしていくシリーズ「平成生まれ昭和育ちへのインタビュー」。

今回の舞台は、高円寺の高架下にひっそりとたたずむ昭和懐メロ酒場「ヤングマスター」。店内には昭和の名曲のレコードが飾られ、聴き慣れたメロディが常に聴こえてきます。

ヤングマスターの店主であるジョーさんは平成3年生まれの現在29歳(2020年時点)。普通のバーのマスターとしてもかなりお若いだろう年齢なのに、なぜ「昭和懐メロ酒場」を経営することになったのか?

平成生まれ昭和育ちへのインタビュー、第2回である今回は、そんな謎に満ちた「ヤングマスター」の店主であるジョーさんにお店ができた経緯や音楽への思いをインタビューをさせていただきました。

 

(平成生まれの昭和好きのためのコミュニティ・昭和ポップス倶楽部の代表・かなえさんがインタビュアーを務めています。)

昭和の音楽に目覚めたキッカケ

ヤングマスターの店内。各種名盤が目に入る

まずは、ジョーさんが昭和ポップスに目覚めたきっかけを教えて下さい。

たしか5、6歳くらいの時におじいちゃんと一緒にお留守番をしてて、テレビを見ていたときにかぐや姫の『神田川』が流れていたんだよね。
よくわからないけどその曲が気に入っちゃったみたいで、その後お母さんに「赤い手拭いの歌が聴きたい。」って言っていたらしくて(笑)それが昭和ポップスとの出逢いだったかな。
その後、かぐや姫の2枚組のベスト盤をTSUTAYAで借りてもらって、いとこに頼んでダビングしてもらってひたすらそのカセットを聞いてたなぁ。

かぐや姫さんが入り口だったんですね……!

そうそう。年頃になって、自分でダビングできるようになってからは、自分の足でTSUTAYAで昭和のアーティストのCDを借りて片っ端から聞いてたよ。

自分の世代のJ-POPにハマったことはなかったんでしょうか?

全く聴かなかったわけじゃないけど、ハマったといえるのは唯一、高校生の時に倉木麻衣にハマったくらいかな。見た目が好きってのもあって(笑)
いまだに女性アーティストで一番曲数知ってるの、倉木麻衣かもしれない(笑)

ジョーさんは、女性アーティストの音楽はあまり聴かないんですよね(笑)

あんまり聴かないね(笑)
かぐや姫をはじめ、吉田拓郎、井上陽水、松山千春、GSから80年代バンドまで……いろいろ聴いてたけど、特にフォークソングをよく聴いてたかも。

その中でジョーさんの価値観などに影響を受けたアーティストはいますか?

フォークシンガーはわりとまんべんなく好きだし、特に影響を受けたアーティストがいるわけではないんだけど、村下孝蔵の弾き語りに憧れて23歳の時に勢いでギターを買って、そこからYouTubeで見よう見まねで弾いてたから、そういう意味では彼から影響は受けたかなぁ。

ギターは、大人になってから始められたのですね!

高円寺に「ヤングマスター」をひらくまでの経緯

中は見えないけど素敵な空間が広がっています

現在の仕事に就くまでは、どんなお仕事をされていたんですか?

18歳から2年間くらい地元の静岡県浜松市で働いていて、20歳になって上京して働いていたよ。

そこからどういう経緯でヤングマスターの店主になったのでしょうか……?

実はヤングマスターが始まるまで、あの場所は別のお店だったんだよ。
「昭和おんがく館」っていう名前のお店で、文字通り昭和の音楽を楽しむお店で、楽器やカラオケも置いてる店だったんだ。
俺はそこの近くに住んでいて「こんなお店があったんだ」と思って気になって入ったのがこのお店との出会いだったんだけど、そこからどんどん通い始めてね。

しばらくしてマスターとママからあと1年でお店を閉めるって聞いて。寂しかったけど、2人とも本業の仕事もあって両立が難しくなっちゃったみたいでね。ただ、「せっかくなら気のしれた誰かにこの場所を継いでほしい」っていうことで、俺に白羽の矢が立った感じかな。

頻繁に通われていたから、そんなお話が舞い込んできたんですかね?

そうだね、週3回くらい通ってたかな。マスターやママにも、気に入ってもらってたと思う。

まずはお店があと1年で閉店するっていうタイミングで、週に2日あった定休日を貸してくれるってことになって。「1年試しに営業してみて、うまくいきそうだったら、居抜きで譲るから自分のお店にしていいよ」って言われて、週に2日ほど俺が営業をするようになったんだ。それでなんとなくやってみたら、意外とうまくいっちゃったというか…(笑)

「ヤングマスター」でのお仕事のやりがい

お客さんと一緒にセッションしたりカラオケしたりと大人気なジョーさん

「ヤングマスター」としてオープンして3年ほど経ったとのことですが、お仕事の魅力ややりがい、大切にしていることはありますか?

お店として大切にしていることは、お店の中では仕事や人間関係や、日常の嫌なことを忘れて楽しめるような、そんなお店になればいいなと思ってる。あと、個人的に楽曲ってタイムマシーンだと思っていて。例えば思春期の時に聴いた曲を聞いたら、当時の記憶を思い出したりするでしょ。だから懐メロがいろいろな過去の記憶なんかを蘇らせてくれるのも魅力だね。

あとは、マスターの俺が若いっていうのもあるけど、店に来てくれる同世代の人たちで、「ずっと音楽で共感できる人がいなくて孤独だった」なんて人も多くて。このお店が居場所になってくれているのが、すごく嬉しいし、やってて良かったなと思う。

そういう若者って、多いですよね。ジョーさん自身もそんな「孤独だった」経験ってあったんでしょうか?

もちろんあったよ!周りに昭和の音楽が好きって言う度、「ダサい」って言われてたね。これはファッションでもなんでもそうだと思うんだけど、昔のものって一周回って流行ったり評価されたりするでしょ。当時は一周回りきってなかったから、「昭和のもの=ダサい」って風潮が強かった。
ここ最近になって再評価されはじめたけど、俺が高校生くらいの頃までは周りで聴いてる同世代は誰もいなかったな。

人付き合いは得意な方だから苦労はしなかったけど、そういう意味ではすごく孤独だったかな。

ヤングマスターを開いて、同世代の同じ音楽を好きな人たちもたくさん来てくれるようになったと思うのですが、それは孤独を経験したジョーさんにとって救いになった部分もあったんでしょうか?

そうだね、報われたっていう気持ちはある。たまに泣きそうになることあるよ。当時は誰もわかってくれなかったしね。
ヤングマスターを始めた頃に、同世代のお客さんと『「いちご白書」をもう一度』をセッションしたんだけど、すごく感動しちゃって。同世代でこんなことをできるなんて思ってもいなかったから(笑)
そういう意味では……報われたのかもね。

もしヤングマスターをやっていなかったら、どんな20代後半を過ごしていたと思いますか?

多分、自分で事業をして成功してるか失敗してるかのどっちかだったと思う。それか、普通のサラリーマンをしていたかもしれないね。
でも結果的にはヤングマスターをしてて良かったと思うよ。

「ヤングマスター」の今後の展望

奥がセッションできるスペース。ピカチュウがマスターの世代を物語る

ジョーさんのような若いマスターがやっているお店ってめずらしいと思うのですが、ヤングマスターに来店されるお客さまにはどんな方が多いのでしょうか?

年代でいうと、若い世代が7で、世代の人が3の比率かな。交流の場として世代の人も交えつつ、店としてはこのくらいの割合を維持していきたいかな。

どんな人っていうところでいうと、居場所を求めてやってきた若者もいるし、たまたまふらっときたけどこういう昔の音楽いいよねって言ってくれる人もいるし。うちは懐メロ好きな人しか来ちゃだめってことはまったくなくて、むしろにわか大歓迎だから(笑)

始めた経緯が成り行きみたいな感じだったのもあって、そういう意味ではライトな懐メロファンでもかなり来やすい店のかもしれないね。

お客さまにも若い世代の方が多いのは特徴的ですね!
これからこんなお店にしていきたい、という思いはありますか?

最近は、興味はあるし行きたいけどまだ勇気が出ないという人のために、雰囲気がわかるようにホームページのブログ更新だったりYouTubeの配信を積極的におこなっているところ。

今後の課題としては、カラオケもセッションも出来てしまうがために、「カラオケしたくて行ったけど、今日はそういう雰囲気じゃないな……」みたいな人も出てきてしまうと思うので、そういうのをなるべく無くしていきたいかな。
だからゆくゆくは曜日ごとにカラオケやセッションを分けたり、特定のイベントを催したりとか、お客さんがいやすい環境づくりのためにもいろいろ試験的にやってみようかなと思ってるよ。

ジョーさんにとって昭和ポップスとは?

尾崎豊似(筆者談)のイケてるマスター。けれどどこか昭和を思わせる渋みがある

これまでお店のこと、ご自身のこと、音楽のことについていろいろとお聞きしてきましたが、そろそろ最後の質問になります。
ジョーさんにとって昭和ポップスとは、どんな存在でしょうか?

考えたこともなかったなぁ。なんか、「あなたにとってお米とはなんですか?」って聞かれてる感じというか…お米って主食として当たり前に食べるじゃない。
俺は子どもの頃から昭和ポップス以外にも、趣味も感性も全体的に昭和的だったみたいで(笑) 必然的に好む音楽もそうであったってだけで、当たり前のようなものだったな。

なるほど……もう価値観そのものなのですね。

昭和ポップスを通しての生きがいだったらあるよ。
まずは自分と同じように孤独を経験した同世代の人達に居場所を提供できたのは嬉しいなと思う。

リアルタイム世代の方に対しては、ヤングマスターでかぐや姫の「22才の別れ」を世代のお客さんをとセッションしたことがあったんだけど、終わった時に「あの頃に帰れた気がする」ってお客さんが言ってくれて。その時に、「ああ、曲ってタイムマシンなんだ」って、感動してしまったんだよね。
そんな風に、それぞれの「あの頃」を思い出させてあげられたのかなって思えるときは、ヤングマスターをやってて良かったと思うよ。

ジョーさんの、お店やお客さんに対する思いをじっくり聞くことができて、今回とても楽しかったです。
今後とも、若者が昭和ポップスを楽しむカルチャーを一緒に盛り上げていきましょう!
ご協力いただきありがとうございました。

こちらこそありがとう!


最近ではコロナ禍で休業を強いられたりと大変なこともあったかと思いますが、ジョーさんがお店を引き継いでからもう3年。「3年やってみて、3年は続いたぞという自信になった」と語るジョーさん。

ヤングマスターはバーというだけでなく、若者の居場所だったり、世代に関わらずの交流の場であったり、新しい音楽を発見できる場でもあると思います。
現在、オンラインを中心にマスターとしての活動の場を広げている最中ということで、これからお店がどんな人に愛され、どんなお店になっていくのかが楽しみですね。

店舗情報

昭和懐メロ酒場「ヤングマスター」
〒166-0002 東京都杉並区高円寺北3-1-1 1F
営業時間 : 18:00 ~ Last
定休日:火・水
※公式サイトにて最新の情報をお確かめください

公式サイト:昭和懐メロ酒場 ヤングマスター
公式Twitter:昭和懐メロBAR ヤングマスター【公式】
ジョーさんのTwitter:ジョー@懐メロBARヤングマスター

毎週月曜日配信!
ジョーくんの昭和懐メロ酒場 ヤングマスター – YouTube

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