昭和を代表する福島出身歌手・音楽家ゆかりの地まとめ
こんにちは!昭和ポップスをこよなく愛するさにーです。2024年5月、友人と「昭和を彩った歌手の方々のゆかりの地めぐり」に行ってきました。今回の舞台は福島県!福島は、じつは数多くのレジェンドたちを生み出している地なのですよ!ご存知でしたか?
それでは、実際に私たちが巡った順に紹介していきます!
福島出身歌手・音楽家ゆかりの地に行ってきた
猪俣公章さんのお墓・法界寺
まず最初に向かったのは、作曲家・猪俣公章さんが生まれた場所であり、今も眠っている会津坂下町。町役場の付近に「猪俣公章生誕の地」と標す記念碑がありました。
こうしてきちんと故郷がアピールすることってとても大事ですよね!
そして今回の目的は、徒歩でこのすぐ近くにある法界寺(ほっかいじ)。
会津戊辰戦争の際に婦女隊を率いて戦った中野竹子さんのお墓も同じお寺にあるようです。
お寺やお墓の写真はあまり良くないかな。。と思い撮っていませんが、お寺の門をくぐってすぐ左側に猪俣公章さんのお墓がありました。
猪俣公章さんは1993年生まれ。私が生まれた1年後に亡くなっているため、「猪俣公章」という字面でしか見たことがなかった方の名前がお墓の脇に記されており、「ここにあの猪俣さんが眠っておられるのか……」と思うと、とても不思議な気分。
あたりはとても静かで、ひっそりとした場所でした。
法界寺 info
場所:福島県河沼郡会津坂下町光明寺東光明寺東甲3944
アクセス:会津バス(若松・坂下線)坂下橋本バス停より徒歩3分
春日八郎記念公園・おもいで館
次は、同じ会津坂下町出身の春日八郎さんのゆかりの地へ。春日八郎さんは、この会津坂下町の名誉町民でもあります。
まずは「春日八郎記念公園・おもいで館」へGO。
法界寺からの距離は3kmほど。時間さえあれば歩いても良かったのですが、今回は分刻みのスケジュールのためタクシーを利用しました。
公園とありますが面積としてはかなりコンパクトです。公園内にはなんと「別れの一本杉」のモデルになったという杉の木が!
その隣には同曲の歌碑も。近づくとセンサーで反応し「別れの一本杉」が流れます。しかもオリジナルのバージョン&フルサイズです(普通はオリジナル音源ではない&サビのみのことが多い)。すごい!
記念館の中に入ると、春日八郎さんの思い出の品々が展示されています。
館内にはカラオケコーナーもあり、春日八郎さんの名曲を歌うことができます。私と友人は「お富さん」を一緒に歌いました。ちょっとシュールだったけど楽しかった。歌う曲は「別れの一本杉」「赤いランプの終列車」などの8曲くらいから選ぶことができます。
さらにグッズも販売しています。キーホルダーはなんと200円という安さ!レコードのジャケットやラベルをプリントしたもので、裏側がスマホなどの画面を拭けそうな素材になっています。
Tシャツもステキ!!在庫限りらしいので(2024年5月時点)、お求めの方はぜひ早めに……!
館内にはほかにも、春日八郎さんのリリース年表やステージ衣装が飾られています。私たちはグッズ選びに難航したため1時間ほど滞在しましたが、館内の面積としてはそこまで広くはないため、通常であれば外の公園と合わせて30分〜40分ほどあればたっぷり滞在できると思います。スタッフさんも優しくて、素敵な場所でした。
春日八郎記念公園・おもいで館 info
場所:福島県河沼郡会津坂下町船杉554
営業時間:10:00~17:00(冬期間のみ休業)
入館料:無料
HP:https://www.town.aizubange.fukushima.jp/soshiki/29/271.html
春日八郎銅像 in 会津坂下駅
春日八郎記念公園・おもいで館の最寄り駅である会津坂下駅までタクシーで戻ります。
ちょうどいいバスなどはないので、車・タクシー or 徒歩が基本です(おもいで館から駅までは2.7km)。
このJR会津坂下駅前には春日八郎さんのブロンズ像があるのです!
近くに「赤いランプの終列車」の歌碑もあり、スイッチを押すと音楽が流れます。
春日八郎さんはこの駅から旅立ち、上京した時のことを、このように振り返っています。
いよいよ上京という前夜、母は赤飯をたいて、祝ってくれた。会津坂下の駅まで見送りに来てくれた母が、チリ紙に小さく包んだものを、そっと渡してくれた。
春日八郎「ふたりの坂道」翼書院(1981)p.113
「落とすんじゃねえぞ。あんちゃんとこへ着いて、ひとりになってからあけてみろ」
兄夫婦の家におちついて数日後、私は夜になって、チリ紙の包みをあけてみた。キチンとたたんだ二枚の十円札が出てきた。母の心づくしの贈り物といえた。母の心がうれしかった。その後も長い間、これには全く手をつけなかった。
まさに、ここから東京へと旅立っていった春日八郎さん。その駅前に銅像があるなんて素敵ですよね。
また、春日八郎さんは会津坂下町民歌および会津坂下音頭をみずから作曲・歌唱しているそう。彼自身も故郷への思い入れが深かったことが想像できます。
また、会津坂下町の午後5時を知らせる防災無線のメロディは「別れの一本杉」なのだとか。今回は時間が合わなかったので聞くことができなかったのですが、タイミングが合う方はぜひ聞いてみてください。
春日八郎ブロンズ像・歌碑
場所:JR只見線 会津坂下駅
住所:福島県河沼郡会津坂下町石田
ちなみにこのあと、駅前すぐのところにある「山方屋食堂」さんというところでお昼ご飯にラーメンを食べたのですが、普通のラーメンなのにすっごくおいしかった。喜多方っぽい感じなのかな……?値段も安かったし(600円くらいだった気がする)。完飲した(塩分!)。
猪苗代湖(梅沢富美男)
次は、電車で観光地としても有名な猪苗代湖へ。こちらは梅沢富美男さんのゆかりの地なのです!
子供の頃、猪苗代湖に飛来する白鳥と雪をまとった磐梯山の冬景は、寒さを忘れて見入ってしまうほどでした。娘にパパの故郷に行きたいと言われて、はじめて行った家族旅行が猪苗代湖。娘と一緒に白鳥に餌をやったあの日、「パパの故郷は綺麗なところだね」と言われたあの日から、猪苗代湖が僕の絶景ナンバーワンになりました。
家庭画報.com「ふるさとの絶景【福島県】澄み渡った猪苗代湖の水面を優雅に行き交う白鳥たち」より引用
奥に見えるのが磐梯山。水も冷たく、透き通っています。絶景!この景色を、梅沢富美男さんも見ていたのですね。冬になったらまた全く景色が違うんだろうなぁ。
これまで全国の歌手ゆかりの地めぐりをしてきましたが、やはり昭和デビューの歌手に縁のあるお店となると、店主さんが高齢なことも多く、行ってみて閉店していた!ショック!ということもしばしば。そう考えると、このようにいつまでたっても変わらない景色があることはとてもありがたいことです。
猪苗代湖
参考:アクセス – 猪苗代観光協会【公式ホームページ】
JR福島駅発車メロディー(古関裕而)
その後、福島駅へ。在来線の発車メロディーは福島県出身の作曲家・古関裕而さんの「高原列車は行く」が、新幹線では同じく古関裕而さん作曲の「栄冠は君に輝く」が使われています。今回は在来線で移動したので「高原列車は行く」だけを聴きましたが、かなりの長尺で使われており感動。聴いていると遠出でもしたくなるウキウキな旋律は、駅メロにぴったりですね。
福島駅周辺は古関裕而ゆかりの場所がたくさん!
2日目のメインは、作曲家・古関裕而さん!福島駅の周辺には古関裕而さんゆかりの場所があちこちに見られます。
古関裕而生誕100年記念モニュメント
JR福島駅東口には、古関裕而さんのモニュメントがあります。これは生誕100年を記念して2009年に建てられたもの。
8時から20時までの30分ごとに、古関メロディーを聞くことができます。駅を出てすぐの場所にあるので、目に入ること間違いなし!
見てほしいポイントは、その精巧なつくり。ハモンドオルガンには音色を変化させるレバーがたくさんついているのですが、そこまで丁寧に作り込まれています。今にも古関さんが動き出し、音楽を奏で始めそうないきいきとした銅像。お顔だけでなく、手元にもぜひ注目してみてください!
西口広場にもあるモニュメントからもメロディーが流れる
そして、古関メロディーが聞けるのは東口だけではありません!少し開けた印象のある西口駅前広場のモニュメントからも、その旋律を聴くことができます。
流れる時間とメロディーは東口の古関さん銅像と同じなのですが、モニュメント付近にあまり詳しいことは書かれておらず、地元の方にも(時間で鳴ることが)そこまで広く知られていないとか。隠れゆかりの地ですね。
古関裕而生誕の地記念碑
東口から駅前通りをまっすぐ通り抜けていくと左手に見えるのが、古関裕而生誕の地記念碑。
1909年にここ、福島市大町にて「喜多三呉服店」の長男として生まれた古関裕而さん。音楽好きの父が蓄音機で聞いていたメロディーが幼い頃の記憶として残っているとか。
9時、12時、15時の3回「さくらんぼ大将」「とんがり帽子」「阿武隈の歌」が流れます。
各地にあるメロディーボックス
他にも各地にメロディーボックスがあります。
他にもたくさんのスポットが駅前付近にあるので、ぜひ探してみてください!
詳しい位置などを知りたい方は、福島民友新聞社と福島市役所で出しているゆかりの地マップが見やすかったので、ぜひそちらをご覧ください。
古関裕而記念館
そしてメインイベントでもある古関裕而記念館へ。福島駅東口からバスがでています。
このバスがまたかわいいんです!
「メロディーバス」といって、古関メロディーを奏でながら走り、古関裕而記念館に連れて行ってくれるバスなのです。車内でもずっと古関メロディーが流れていて、世界観が統一されており、手の込んだおもてなしに感じました。
バス停も、ちゃんと「古関裕而のまち」を意識しています。
バスが到着!
すると、バス停から記念館までの間にこんなマンホールが。
なんと、こちらただのマンホールではありません。専用アプリを入れてこのマンホールをスマートフォンで読み取ると関連情報やARアプリによる動画再生が楽しめるのです。実に細やかで徹底したまちづくりです。
そして記念館に到着しました!
1988年にできた、こちらの記念館。後世にその業績と「古関メロディー」を広く継承していくことを目的として運営されています。施設ができてから30年以上経っていますが、2021年にリニューアルされていることもあり、中はとてもきれい。
中は基本的に写真撮影禁止だったので写真はありませんが、古関裕而さんの貴重な資料や仕事部屋を再現した書斎などを見ることができます。珠玉の古関メロディーを全身で堪能できる空間も(サウンドにはとてもこだわられたと記念館の方が仰っていました)。
古関裕而さんも私が生まれる前に亡くなっている方のため、つい「歴史」として捉えてしまいがちな部分があるのですが、これらの資料を見るとじつに人間味が感じられて、古関さんという人物をとても近くに感じられました(とくに奥様になる方へのラブレターは必見です)。
古関裕而記念館
福島市入江町1-1(アクセス)
開館時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)年末年始を除く
入場料:300円
駐車場:あり・無料(170台)
HP:https://www.kosekiyuji-kinenkan.jp/
福島歌手・作曲家ゆかりの地めぐりの感想
福島は「ゆかりの地」の完成形
ほかにも、福島には古関裕而さんの功績を称え、それを後世に残していこうとする意志が随所に感じられました。今までゆかりの地めぐりと称して福岡、広島、愛知、大阪、京都、静岡、佐賀、長崎、岐阜、宮城の10府県を巡ってきましたが、「こんなに有名な歌手がいるのに、それを押し出さないなんて、なんてもったいないんだろうなぁ」と感じることが非常に多かった(もちろん存命の場合本人の許可とか権利とかいろいろ大変なのだと思いますが……)ことを考えると、福島ではそれのひとつの完成形を見た気がしています。「これだよ!こんなふうに街が誇る人がその土地に溶け込んでいる姿が見たかったんだ!」とゆかりの地めぐりマニアとして大変テンションが上がりました。
そしてそれは福島駅の古関裕而さんだけでなく、会津坂下町駅の春日八郎さんもそうだったんですよね。駅を降りてすぐに銅像があり、歌碑があり、この街からこんな素晴らしい人が生まれたという事実を街をあげて誇っているのを見る時、あぁ訪れてよかった、と感じます。まあ私たちのようにゆかりの地めぐりばかりする人は決して多くないだろうとは思いますが、たまたま来たときに「へぇ、この街はそういう場所なんだ」とその土地のカラーを感じられるだけでも良いと思うのです。
ゆかりの人物プッシュは観光客のためだけではない
それは決して観光客のためだけでなく、そこに生きていく子どもたちのためでもあります。私は岩手県出身で、故郷が宮沢賢治さんの生まれた地であることを誇りに思っていますが、それは地域でも学校でもそのことを誇りとする施設があったり、それを解説する掲示、大人たちの何気ない会話、学校での先生のひとことなど、ちいさな意識が積もり積もったものから形成されたものです。
しかしながら一方で、同県出身の大滝詠一さんや藤圭子さん、N.S.Pが生まれた地でもあることは故郷を離れてから知り「なぜもっとアピールしないんだろう」、「なぜだれも教えてくれなかったんだろう」と感じたことを覚えています。それは単純に私の勉強不足で終わらせることもできますが、本来ならば、「(ここでいう宮沢賢治のように)そこに住む誰もが気づいたら身近に感じている」状態が望ましいはずです。
だって、そこに住んでいる人が知らないわけだから、観光客がそこをふら〜っと訪れただけで気づくはずがないですよね。やはり、せっかく聖地巡礼をしていても、「その人がこの街で生きた証」「その地域の人にとって特別な存在であること」が感じられないと、ちょっとがっかりしてしまう部分があるのも事実。言うは易し、であることも承知していますが、自治体にはもっとアピールしていってほしいなと感じます。そしてその結果、観光客でも明らかに「ゆかりの地」であることに気づける状態というのは、地域にとっても愛着を抱きやすく、健全な状態なのではないかと思います。
ともかく福島は、そんなことに気づかせてくれる素晴らしい場所でした!また機会を見つけて訪れたいです。
今回行けなかったゆかりの地
最後に、今回旅程の問題で行けなかった(けれども、いつか行きたい)ゆかりの地を挙げておきます。行った方は、ぜひ感想聞かせてくださいな。
- 丘灯至夫記念館(ふるさと文化の館)in 福島県田村郡小野町
舟木一夫「高校三年生」、岡本敦郎「高原列車は行く」など多くの名曲を手がけた作詞家・丘灯至夫さんの記念館です。 - ぞ・ぞ庵(遠藤実別荘)in 福島県楢葉町
舟木一夫「高校三年生」、千昌夫「北国の春」など多くの名曲を手掛けた作曲家・遠藤実さんが別荘として使ってい古民家が、体験型の宿泊施設として2024年に再生。 - 霧島昇生家 in 福島県いわき市
ほど近い市海竜の里センター敷地内に、代表曲「誰か故郷を思わざる」の歌碑もある。
参考資料
- うつくしま電子事典「春日八郎 人物検索 _ うつくしま電子事典」https://www.gimu.fks.ed.jp/plugin/databases/detail/3/27/702(2024年7月11日)
- 春日八郎「ふたりの坂道」翼書院(1981)p.113