歌い出しが「もしも」から始まる歌まとめ!同じ言葉でもこんなに意味が違う
「もしも」から歌詞が始まる歌を挙げてください!といわれたら、真っ先に思い浮かぶのは何ですか?探してみたら結構あったのでまとめてみました。
そして、ただまとめるのも芸がないので、それぞれの曲の「もしも」はどんな用法で使われているのか?についても勝手に考えてみました。
「お嫁においで」加山雄三【約束型】
もしもこの舟で 君の幸せ見つけたら
加山雄三 お嫁においで 歌詞
すぐに帰るから 僕のお嫁においで
「もし〜なら〜してほしい」という約束の文脈で使われています。つまり「もしもこのシュートが入ったら…俺と結婚してくれ」と同じ文法です。 このセリフを聞いたあとにシュートが入ったのを見た試しを見たことがないんだけど、成功例知ってますか? ・・・失敗フラグっぽいですが、加山雄三は陸に帰れたんだろうか。
「あなた」小坂明子【妄想型】
もしも私が 家を建てたなら
小坂明子 あなた 歌詞
小さな家を 建てたでしょう
大きな窓と 小さなドアーと
部屋には 古い暖炉があるのよ
完全に健全なる少女の妄想です。 「もし〜なら〜になってほしい」という具合に使われています。 「もし宝くじで7億当たったらアレがほしい!!」という、実現可能性があるかないかは別として妄想すること自体を楽しむスタイルの「もしも」です。またの名を取らぬ狸の皮算用型とも。
「もしもピアノが弾けたなら」西田敏行【幻想型】
もしもピアノが弾けたなら
西田敏行 もしもピアノが弾けたなら 歌詞
思いのすべてを歌にして
きみに伝えることだろう
このあと、「だけどぼくにはピアノがない」と歌詞は続きます。
そのため、「もし〜なら〜するのに(けどできない)」という文法がつかわれています。 「もしも翼があったらとんでいくのに(けどできない)」みたいな叶わぬ幻想を抱いているというわけです。
この「ぼくにはピアノがない」に対して「じゃあ買えよ!!」と言ってしまう無粋な方は、「もし怪我してなかったら甲子園行ってたのになぁ」のように「ピアノさえあれば伝えられるのに、ピアノがないから無理」という言い訳型として「もしも」を解釈しているわけです。これが「言い訳型」だとピアノも弾けない、腕もない、たぶん相手と結ばれることもないこの人(西田敏行)がかわいそうすぎるので、幻想型にしておきましょう。
「恋におちて-Fall in Love-」小林明子【絶望型】
(作詞:湯川れい子 作曲:小林明子)
もしも願いが叶うなら
小林明子 恋におちて-Fall in Love- 歌詞
吐息を白いバラに変えて
逢えない日には 部屋じゅうに飾りましょう
貴方を想いながら
これも幻想型です。 「叶いっこないないよ、叶いっこないけど、もしかなうなら…」という文脈。 宝くじの「あなた」と妄想という意味では似てますが、無邪気な妄想ではなく絶望的な幻想。
注目すべきは、幻想の内容が「もしも願いが叶うなら、貴方に逢いたい」ではなく、「逢えない日もせめて穏やかに貴方を想わせてほしい」というニュアンス。この曲は不倫をテーマにしているといわれてますから、この人にとって逢えない日というのは、おそらく相手が家族と過ごしている日。現在、逢えない日にとても心を痛める日々を送っているわけです。そんなときにも静かに好きでいたいという悲痛な女心よ。
幻想の内容をもってして、主人公のいまの心情と手放しで相手を愛せない特殊な状況をたった数行で表現しているあたり、まじで秀逸です。
「芽ばえ」 麻丘めぐみ【遠回しな感謝型】
麻丘めぐみちゃんのデビュー曲。
(作詞:千家和也 作曲:筒美京平 )
もしもあの日 あなたに逢わなければ
麻丘めぐみ 芽ばえ 歌詞
この私はどんな 女の子になっていたでしょう
足に豆をこさえて 街から街
行くあてもないのに 泪で歩いていたでしょう
「もしも〜していなければ〜だったろう」の用法。 あなたに逢わなければこんな幸せに気づかなかったわ、イコール、あなたに会えて本当に良かった、という「遠回しな感謝」型といえます。
あるいは「やっべ、もしも電車を使ってたら間に合わなかったわ、ラッキー」のような「命拾いセーフ型」とも取れそうですが、シンプルにそんな歌はいやだということでやはり感謝型か。ただこれを恋人のいない女友達の前で言っているとしたらとんでもないマウンティング型になるよ。
「時の流れに身をまかせ」テレサ・テン【後悔型】
(作詞:荒木とよひさ 作曲:三木たかし)
もしもあなたと 会えずにいたら
テレサテン(鄧麗君) 時の流れに身をまかせ 歌詞
わたしは何を してたでしょうか
平凡だけど 誰かを愛し
普通の暮らし してたでしょうか
なんと、これも「芽ばえ」と同じ「もしもあなたと会えなかったら」という歌い出し。しかしながらこちらは感謝どころか、あなたと出会ってしまったことを若干悔いているように感じます。「もしも〜していたら〜だったかもしれないのに」という、ズバリ「後悔型」でしょう。 「もしも就活失敗してなきゃ今ごろ大金持ちだったのに…」のような形で使われます。悲しくなってきた。
ところが、「普通の暮らししてたでしょうか」のように自問自答形式にしているあたりが解釈の難しいところ。「普通の暮らししてたでしょうか(いや、していない)」という反語形式を取っているようにも見えるし、「いったいどうしていたんだろうね」のようなヤサグレに受け取ることもできます。あるいは、そんな問いの答えも思い浮かばないくらい遠いところまで来てしまったという表現にも感じます。何をしていたかはわからないけど、苦しいけれどそれでも幸せ…といい聞かせているという解釈もありそう。一つの歌詞につまっている情報量が多すぎて作詞家がこわいよ。
「もしも明日が…。」わらべ 【お飾り型】
(作詞:荒木とよひさ 作曲:三木たかし)
もしもあしたが 晴れならば
わらべ もしも明日が…。 歌詞
愛する人よ あの場所で
もしもあしたが 雨ならば
愛する人よ そばにいて
これは世にも珍しい「もしも」の使われ方です。 「もし(A)だったら(Z)、もし(B)だったとしても(Z)、さらに(C)だったとしても(Z)」という、どんなパターンでボタンを押しても早炊きしかしない炊飯器みたいな文法です。じゃあ(Z)一択でいいだろと。 つまりそういうことなのです。どんな条件分岐にも負けずに「なんでもいいから会いたい」「どんな状況でも会いに来て」「雨でも風でも関係ない」みたいな状況です(たぶん)。名付けて 「お飾りもしも型」。ここにきて、ついに「もしも」は意味をなさないという境地にまで達することができました。
もしも、から始まる歌はロマンティック…!
- 「お嫁においで」加山雄三
- 「あなた」小坂明子
- 「もしもピアノが弾けたなら」西田敏行
- 「恋におちて-Fall in Love-」小林明子
- 「芽ばえ」 麻丘めぐみ
- 「時の流れに身をまかせ」テレサ・テン
- 「もしも明日が…。」わらべ
「もしも……」という想像からはじまるからこそ、こう並べてみるとやっぱりロマンな曲が多いです。聴いている人をイマジネーションの世界に連れて行き、感情移入させるのが上手な曲ばかり。だから、こんなに名曲揃いなのかな?
今回は文脈で分類してしまいましたが、一旦これらは忘れて、ぜひ想像の世界に身を委ねて聴いてみてくださいな。
※考察は超個人的な感想です
歌詞引用:http://j-lyric.net/