【まさにリトル プリンセス】岡田有希子ちゃんが現在も人気の理由

1984年にデビュー。1986年、人気絶頂期に18歳という若さでこの世を去ったアイドル、岡田有希子

有希子ちゃんがアイドルとして活動した期間はたった2年間。亡くなってからすでに30年が経ちましたが、現在も彼女のトリビュート番組(ラジオ)がレギュラー放送されていたり、ブロマイド売上でも上位の常連となっていたりと、未だに根強い人気を誇っています。
さらに最近は、ネットで容易に当時の映像が見られることも手伝ってか、SNS上でも新たに彼女の歌声に魅せられた10代〜20代のファンを多く見かけます。

彼女はレコード売上的にはそこまで大きな記録を残しているわけではありません。にもかかわらず、SNS上でも現実でも、まじでユッコファンに会う確率が高いんです。

他の同年代のアイドルとかと比べると、その確率が歴然なもんだから、ずっと「なんでだろう」って思ってました。でもって私も好きになっちゃったもんだから、「彼女の何がこんなに人を惹きつけるのか!」について、考えてみました。

私が一番好きな「リトル プリンセス」の歌詞と一緒に見ていきます。

岡田有希子ちゃんがデビューした1984年ってどんな年?

彼女がデビューしたのはアイドル黄金期真っ只中の1984年。同期としては、吉川晃司や菊池桃子がいます。

可愛くて歌が上手いだけじゃ売れない時代

この時期、多くのアイドルがオリコンチャートを席巻していました。けれど、松田聖子、河合奈保子、中森明菜、松本伊代、早見優、石川秀美、堀ちえみ…などなど80年代を代表するアイドルはすでにかなり輩出されていたため、アイドルたちは過渡期を迎え初めていました。
可愛くて歌がうまいってだけじゃ生き残れない。そのため、時には奇抜な設定のアイドルも、出ては消えてを繰り返していました。

もはや正統派では生き残って行くことは難しくなってきたというか、王道で勝負するのをもう誰も選ばなくなっていた、1984年はそんな時代でした。

時代おくれの正統派アイドル、岡田有希子

アイドル・岡田有希子の代表曲「リトル プリンセス」は彼女の魅力そのもの


そんな中、岡田有希子ちゃんは「ステキの国からやって来たリトル・プリンセス」というキャッチコピーを提げ、この1984年にデビューしました。
いわばどまん中・ストレートの正統派アイドルとして。

すごく時代遅れであるなら逆に目新しかったのかもしれませんが、彼女は単にちょっと遅かった。「ポスト松田聖子」と言われていたとも聴きますが、それは、いわば「正統派アイドル」の地位はもう松田聖子が全て占領してしまっていて、入る余地がなかったということの表れかもしれません。

有希子ちゃんはたしかに可愛いし歌も上手いけど、せいぜい「ポスト」聖子にしかなり得ないだろうと大衆は踏んでたんですね。

しかし、プロデューサーがそれに気づいていないはずがありません。わかっていても、きっとそのキャラクターで出したかったのでしょう。そして現にそのキャラクターは成功し、彼女はその大衆の予想を裏切っています。

彼女の何が人々の琴線に触れたのか。「リトル プリンセス」の歌詞を見てみます。

代表曲「リトル プリンセス」が岡田有希子の魅力を表している

彼女の代表曲「リトル プリンセス」の歌詞の一文です。キャッチコピーからするとデビューシングルっぽいですが、2枚目のシングルです。

「リトル プリンセス」の歌詞

まず、、歌詞がどちゃくそメルヘン。ブランチ・遊園地・プリンセス・おとぎの国!!こんなん一般人が言ってたら白い目で見られるよ。私が言ったらピーターパン症候群を疑われること間違いなし。キラキラした世界、まさにおとぎの国のお話。また、歌詞だけでなく、編曲もキラキラとした乙女ちっくなものになっています。

多分最初に歌詞だけを読んでしまうと、「80年代ってこういうザ・アイドル☆みたいな歌詞あるよね〜」って思って終わっちゃうかもしれません。

けれども!歌を聴くと不思議で、そう感じさせない何かがあるんですよね。曲調もなんだろうけど、いちばんは有希子ちゃんの声なのかな。高くもなく低くもなく、ものすごい歌唱力が売りなわけでもないのだけど、春風がフワッと耳の横を通り抜けていくような甘さと爽やかさがある歌声なんですよね。

でもって、それが彼女の可憐でまだ幼さの残る容姿と、ものすごい合うんですよ。ピーターパンな歌詞もまた、有希子ちゃんが歌うと違和感がない。

それになにより、リアリティがどうのこうのとを考えるのなんて野暮な気がしちゃうんです。前の日に半額の弁当を買ってディズニーランドに持ち込むくらい野暮な気がしちゃうんです。この曲によっておとぎの国の世界に自分も入った気になっちゃうっていうか……
まさにこのシチュエーションのように、遊園地マジックにかかったような気分にさせるんです。

「おとぎの国へ連れてって」のとおり、聴いている側がまるでおとぎの国へと連れられていくような感覚がするんですよ。

竹内まりやが作った「岡田有希子にしか歌えない歌」

この歌の作詞・作曲を手がけた竹内まりやさんは、岡田有希子ちゃんが歌うイメージというのを完全に意識してつくったんじゃないかなと思います。竹内まりやさんはシンガーソングライターですが、自分が歌うためにこのメルヘンな曲は書けないでしょw 有希子ちゃんに提供して初めて成立する曲だなと思います。

「ポスト松田聖子」など言われながらも、(聖子ちゃんに限らず)むしろ誰にも歌えない領域を作ってみせた岡田有希子ちゃん自身。そして、それを見抜いてコンセプトづくりをしたプロデューサーや竹内まりや。う〜ん、プロの仕事ですな。

余談ですが、こういう、きわめて属人的な曲ってありますよね。この人が歌ってこそ意味をなす、という楽曲。山口百恵「さよならの向う側」だとか、尾崎豊「15の夜」だとか、松山千春「長い夜」だとか(他にもいっぱいありますが…)。

そういう曲をより多く持っている歌手って、根強いファンが付きやすい気がします。有希子ちゃんもまた、そういう曲に何曲も出会えていたように思いますね。

岡田有希子が愛され続ける、もう一つの理由

有希子ちゃんのことで、もうひとつ強く訴えたいことがあります。数年前、有希子ちゃんと同級生でアイドルだった南野陽子さんが、いまでも愛され続けている有希子ちゃんについてこう語っている記事がありました。

同時代を生きたアイドルとして、死後30年が経っても岡田がファンに愛される理由を、南野は次のように考察する。

「アイドルとしての彼女が裏切ることがないからじゃないかな。劣化したなって思われることもないし、誰かのお嫁さんになったわけでもないし……彼女が変わらないでいてくれるからこそ、愛され続けるのだと思います」

岡田有希子、没後30年 南野陽子が「“ゴミ箱”が私だった」と思い出語る

南野陽子ちゃんが言うこともよくわかります。
亡くなったからこそ、ずっと変わらないままでいられる。長いこと芸能界にいたら、知りたくないことも知ってしまったり、ボロが出てしまうこともあるでしょう。

しかし、劣化などしないから、人を裏切らないから愛されているというのは違うな、と思ってしまいます。だってファンにとっては、若くして亡くなったこと自体が彼女の価値ではないからです。

まさにこれからという時にこの世を去った彼女に対して、もっといろんな顔を見てみたかった、そういう期待感や悔しさのようなものも、いっそう思いを募らせるという側面もあるでしょう。
でも、それを魅力として評価されるのは、あまりにも悲しすぎるじゃないですか。私はやはり、彼女そのものに絶対的な魅力が宿るからこそ、いまだに人を惹きつけるのだと思いたいのです。

そのうえで、有希子ちゃんの魅力をもうひとつ挙げたいと思います。

メルヘンなだけじゃない、なぜか心が疼く歌

「リトル プリンセス」は、悲しい歌でもなんでもないのに、私は聴いていてなぜかすっごく泣きたくなるんですよ。いまや化石となってしまった、 「恋に目を輝かせたあどけない少女のころの自分」を思い出すというか。

自分のスペックとか身の程とか考えず、いつか自分もそんなステキな女の子になるんだ……と信じて疑わないプリンセスの心が、小さい頃はあったはずなんです。

私に限らず、女の子にはきっとあったはずなんですよ。いったいいつなくなってしまったのかわからないけど。その頃の気持ちを思い出してしまうと、なぜか、泣きたいような気持ちになってしまう。

有希子ちゃんみたいに可愛い女の子に成長した自分が、気になる男の子と秘密のアイコンタクト。恋も知らない昔に、一度はあこがれた恋愛そのものが、この歌の中にはあるんだなと。

岡田有希子の才能は、女の子を夢見る「リトル プリンセス」にさせてくれること

「リトル プリンセス」をはじめ、有希子ちゃんは歌うたびにいろんな女の子になれるなあ、と聴くたび思います。

ある時は初恋を捧げた同級生のようであり、ある時は恋に目を輝かせたあどけない少女のころの自分であり、いつかこんな風になりたいと憧れた近所のお姉さんでもあり、ちょっぴりドジで愛おしい部活の後輩の女子のようにも見える。

3枚目のシングル「-Dreaming Girl- 恋、はじめまして」なんか、最近少し背伸びし始めた娘のようにさえ見えます。

すごいのが、一見七変化しているようでいて、結局どの時代から見ても理想の女の子なんですよね。
いつかきっとステキな女の子になって恋をするんだと夢見ていた「リトル プリンセス」の時代。そのころに思い描いていた、理想の女の子像。どの曲の有希子ちゃんも、女の子のいちばん純粋に女の子だったころの、あこがれそのものなんです。

彼女にはそんな、人の記憶の中の「プリンセスへの憧れ」を呼び起こす才能があったのだと思うんですよ。

女性というのはほんとはずっと女の子だし、白馬の王子様を待っている。男の子だって、いつかステキなプリンセスが目の前に現れてくれるはずだという憧れがきっとあったでしょう。

しかし大体の人がその夢物語は胸の中に沈めて大人になっていく。現実的でないから……。

ところが、そんな心の中で眠っていたはずの「プリンセスへの思い」が、形を持って現実に現れた。その存在が岡田有希子だったんじゃないでしょうか。誰から見ても、いつの時代に見ても、いつかの理想の女の子を演じられるアイドル。それがやはり、岡田有希子だったのです。

売上で有希子ちゃんを超えた歌手はたくさんいます。もう新しい曲を出すこともなければ、生の声を聴くことさえかなわない人です。

それでも彼女の新しいファンが増え続けているいちばんの理由は、決して「亡くなってしまったことで永遠を手に入れたから」じゃないはずです。きっと心の奥にしまった純粋なプリンセスへの思いを、だれよりも鮮明に思い出させてくれるからなのです。

リトル プリンセス
歌: 岡田有希子
作詞: 竹内まりや
作曲: 竹内まりや
編曲: 大村雅朗
発売日:1984年7月18日

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