【最終回・感想】スローモーションをもう一度、ついに完結…!【7巻】

 

このお話は、80’sカルチャーが大好きな高校生のみずみずしい、そしていじらしい恋愛を描いたものなのです。

そしてついに、2018年5月30日に発売した第7巻をもって完結に至ったということで、「スローモーションをもう一度」全巻通した感想と、今からでも読む価値がありそうか?どんな人にオススメか?などなどをお伝えしようと思います。

※ネタバレ含みます。まだ読んでいない人は自己責任の上お読みくださいm(_ _)m

ついに最終巻!これまでのあらすじ【ネタバレあり】

「80年代の歌やアイドルが好き」という共通の趣味を持つことから
同じクラスの地味め女子・薬師丸ちゃんとひそかに遊ぶようになった大滝くん。

惹かれ合いながらも様々な「壁」が邪魔をしてなかなか進展しない二人だったが…文化祭を経て、ついに付き合うことに!

幸せいっぱいの日々を送る二人…!
しかしそんな中、薬師丸ちゃんのお母さんが「二人の思い出の場所」を取り壊すと言い始め…

果たしてお母さんの真意は?
そして二人は、“幸せな結末”を迎えることができるのか?

Amazonより

6巻は、やっとあのクールそうなお母さんとの関係に変化が…!?てとこで終わりました。

いままで薬師丸ちゃんはお父さんが失踪中でお母さんと二人暮らし?ということしか分かっていませんでしたし、そもそも実はあんまり素性がわかってないんですよね。

下の名前も6巻までの間に出てきていないという。気になるところを残しての最終巻でした。

「スローモーションをもう一度」最終巻の感想

薬師丸ちゃんのお母さんって何を考えてるかわからなくて、薬師丸ちゃんの好きなものを嫌って、冷たくクギを刺すような印象でした。
だけどほんとはお父さんの失踪が自分のせいだったんじゃないかとずっと思い悩み、心の殻にこもっていたことがわかります。
しかも、実はずっと松田聖子のようなアイドルを志していたという。なんと名前は明子さん(!)

薬師丸ちゃんが80年代カルチャーを好きになればなるほど、まっすぐに突き進んだキラキラした過去や、そんな自分をお父さん(夫)がずっと応援していてくれたことや、そんなことも当たり前に思ってかえりみなかった自分を思い出してしまい、しんどくなってしまう。。
お父さん(夫)は実はずっと我慢していて、それが爆発して失踪してしまったのかもしれないと、自分で自分を責めてるわけです。
だから薬師丸ちゃんの趣味に対してもいい顔をしていなかったんですね。もう思い出したくないから…はぁ、せつない。

古くさい趣味〜とかで毛嫌いしているだけかと思いきや、ほんとは、聖子ちゃんになりたいくらい大好きだったんですね。

もう傷つきまくってるじゃないですか(´;ω;`)明子〜…!!!

そのあたりのシーンでまだ赤ん坊の薬師丸ちゃんも登場。赤ちゃんに向けて「知世!」とお母さん。知世!?えっ。薬師丸ちゃんのフルネーム薬師丸知世!
(最初はイメージと違う気が…と思ったけど、これは実は後ほど合点がいくのでした)




 

薬師丸ちゃんが母に認めてもらいたかった本当の理由

そしてこの巻でカギになるのがファッションショーです!
「成長した私を見て、昔のカルチャーが好きだからって前に進めないなんてことはないと認めてくれれば、離れを取り壊さないと約束して!」とお母さんにタンカを切ってのぞんだショー。

この約束のために薬師丸ちゃんは長かった前髪を切り、手芸部に入り、積極的に発言しようとするなど、空回りしながらもすごく「変わろう」という意志か伝わってくるんです。

お母さんに自分の趣味を認めてもらいたいというのはもちろんですが、それだけではないでしょうね。
薬師丸ちゃんにとって自分の趣味を認めてもらうということはすなわち、ひとりで離れでレコードを聴いていた狭い世界がオータキによって広がっていったことや、共有する楽しさを知ったこと、それを通じてオータキのことが好きになったこと、さらにそんな自分のことが好きなんだということを、認めてもらうということでもあるんです。
う〜んっ愛は尊い!

そして、離れを壊すことはお母さんだって本当に望んでるわけじゃないってことを、なんとなく娘もわかってたんじゃないでしょうか。お父さんとの思い出が詰まった部屋を、本気で壊してしまいたいと思ってるはずがないってわかっていたはずですよ。

最終回で見えた「スローモーションをもう一度」タイトルの意味

そしてのぞんだファッションショー。薬師丸ちゃんはずっと悩んでました。
「古いものをまた作るだけなら、なんの意味もない」とお母さんに言われちゃったからね。そこで薬師丸ちゃんは、考えに考えて、ある意志をもってショーにのぞむわけです。「自分がなぜ80’sが好きなのか」について、たぶんここで初めて真剣に考えたのです。

最初は家の「離れ」でたった一人で始まった世界が、誰かと共有したり自分から発信することで、新たな化学反応が産まれて恋が芽生えたり、友だちができたり、成長してきた薬師丸ちゃん。
昔の曲だって一緒です。
もとは作詞家や作曲家の頭の中にだけ存在していたはずの音楽が、歌手の声に乗り、人の耳に届いて初めて曲が生まれるんです。一人では決して、そういった化学反応は生まれないはずで、作る人や届ける人、そして受け取る人がいてはじめて、人や空気に触れてはじめて、ヒット曲は生み出されてきました。

今当たり前になっている音楽の表現や、ファッションや文化も、そうやっていろんな人に触れて化学反応を起こしながら、変容して現代にもつながってきているわけです。

最初は、半ば殻にこもりながら2人でこそこそと趣味を楽しんでいたけど、薬師丸ちゃんはファッションショーを通して、オータキも文化祭や薬師丸ちゃんの手伝いを通して、自分の好きなものをさらけだせるようになりました。
押し売りじゃなくて、ちゃんとその良さを伝えれば「あれっ、意外と良いかも」て思ってもらえたりするもんなんですよね。その結果自分の好きなものを自信を持って表現できるようになるし、周りも楽しんでくれる。

薬師丸ちゃんとオータキ、ふたりの世界だけで最後までわいわいやる作品だったとしたら、ただのオタクが内輪で楽しむ話になっちゃう。そしてただただ「昔はよかったよなあ…」過去を懐古するだけの話になってしまう。
しかし、最後についに不器用な薬師丸ちゃんが周りとの化学反応を起こしたんですね。彼女は80年代カルチャーが現代の日常に繋がっていることの面白さだとか、そのカルチャーのはじまりに何があったのかっていうことを知ることは面白いんだよってこと堂々と発信して完結したのです。

そう、「スローモーションをもう一度」は「昔の輝きをもう一度」って過去にすがる懐古厨じゃないんです。「もう一度」は「めぐりめぐってもう一度」なのであって、決してカムバックの「もう一度」では、ないのです。おそらく。

この部分から、作者の加納さんが80年代カルチャーというテーマを選んだ真意みたいなものがビシッと伝わってきましたね。

あ、そして余談ですが、最後の番外編がよかった。番外編のタイトルも「プロローグ(序幕)」という中森明菜さんのファーストアルバムと同じネーミングってのがいいですね。そして、薬師丸ちゃんの方から先に気になっていたっていうのもまた、よかった。

7巻で明かされた登場人物のフルネームと名前の由来


ここまで、公開されていなかった薬師丸ちゃんの下の名前がついに明らかになりましたね。
ほかにもたくさん登場人物が出てきますが、「これは誰の名前から来てるのか?」がいまいちわかんない人もいたので、由来を調べました。

わたしはこの組み合わせで「薬師丸明子」だと思ってるけど、でも「小林明子」もあるか…?はたまた「小坂明子」?……いや「松本明子」!?いやいやいや。「明菜×聖子」だろうなぁ。

ちなみに…前の章でも話したように、はじめは薬師丸ちゃんの「知世」の名前に違和感を感じたのです。しかし最終巻が「薬師丸ちゃんは過去と現在の文化をつなぐ存在」となって完結したことを考えると、「時をかける少女」としての「原田知世」さんから引っ張ってきたことはなんの違和感もないですね。

まったく公式見解ではないですがそれっぽいことに気づいてしまったので、私の中では納得いきました。

  • 大滝洋樹(オータキ)
    大滝詠一 + ???

オータキ、主人公なのに由来が謎。探してみたけど有力な情報なし…
考えられることとすれば、薬師丸ちゃんのパートナーだから薬師丸ひろ子からヒロキ?みたいな?
もう一つはドラゴンボールの「摩訶不思議アドベンチャー!」を歌っている高橋洋樹さん?
うーんどちらも正直ピンとこない(笑)もし「コレだ!」てのがあれば教えてください!

  • 大滝ゆう子(オータキの母)
    大滝詠一渚ゆう子
  • 宇崎さん(雑貨屋のおっちゃん)
    宇崎竜童
  • その子(宇崎さんの中1の孫娘)
    →おニャン子クラブの河合その子

その子ちゃんはおニャン子好きで、薬師丸ちゃんと一緒に踊ってた回があったね。

  • 小泉 典子(オータキのバイトの先輩)
    小泉今日子松本典子 or 渡辺典子?

小泉さんは見た目がもう、ただのキョンキョン!初登場時は「うわ〜!ついにキョンキョンでた〜!」っておもわず声に出ました。

  • 仲井戸(薬師丸ちゃんの幼なじみ)
    RCサクセションの仲井戸麗市

このひともストーリーの中でRCサクセションの話してましたね。

  • 松本くん(オータキの友達)
    松本隆

これは、苗字しかわかってないけど、もう松本隆さんでしょう!オータキと仲良くなるフラグがたったときは歓喜でした。

松本隆さんと大瀧詠一さんは70年代に「はっぴいえんど」というグループで一緒で、解散した後も松本隆作詞・大瀧詠一作曲でたくさん歌を提供したりしてますからね。松田聖子ちゃんの「風立ちぬ」なんかが有名ですね。

松本くんの下の名前は明らかになってはいないと思うのですが、「トシ」と呼ばれている描写があります。トシちゃんからなのか…?

ちなみに「スローモーションをもう一度」のタイトルは、

中森明菜「スローモーション」
 +
バンバン「いちご白書をもう一度」
or 北山修・加藤和彦「あの素晴らしい愛をもう一度」
or C-C-B「Luckey Chanceをもう一度」

だと思うんですが、う〜ん、どの「もう一度」なんだろう!?
80’sなストーリーだから、純粋に言ったらC-C-Bさんかなぁ。

「スローモーションをもう一度」は繰り返し読む価値がある

最近は、現実になぞらえた漫画みたいなのって昔より増えてますよね。実世界に則してて、参考文献やガイドとして役立つみたいなもの。ストーリーの面白さとは別の意味で手元に置いておきたくなる一冊というか。

この漫画はまさにそうです!基本は2人の関係にドキドキしながらも、普通に80’sカルチャーの勉強になりました。
しかもよく読まなきゃわからないネタが結構ある。(作者さんの愛を感じます)
時間を置いたり、少し詳しくなってから読んだりすると隠しオマージュポイントに気づけたりして、またまた新たな楽しみがあるという。

だからといって別に詳しくなくても楽しめるし、詳しかったらより楽しめるしって感じ。
個人的には、80’s好きだけじゃなくて、いまのスマホありきの恋愛の軽薄さとかになんとなく違和感を感じてる人とかには、グッとくるんじゃないかなぁと思います。


なにはともあれ、加納梨衣さん、出版社さん、素敵な作品をどうもありがとうございました!
読んだ人、ぜひ感想きかせてください〜!語りましょ!

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