【マツコの知らない昭和ポップスの世界】平成生まれが選ぶイントロベストテン

【マツコの知らない世界ふり返り】平成生まれが選ぶ昭和ポップスイントロ・ベストテン

2020年4月28日に放送された「マツコの知らない世界」に出演しました、さにーと申します。番組を観ていただいた方、どうもありがとうございました。

番組内で、共演した高橋昌太郎さんと私が独断と偏見で選んだ「昭和ポップスのイントロ・ベストテン」を発表しましたが、番組の限られた時間の中ではこれのどのあたりががいいのか?ということはどうしても語りきれない部分がありますので、図々しくもしっかり説明させてもらえればと思います!
1位がなんだったか見逃した!という方もぜひご覧ください。

マツコの知らない世界で言っておきたかったこと「昭和ポップス」とは?

イントロベストテンの発表の前に、少しお話させてください。
今回のテーマは「昭和ポップスの世界」だったのですが、昭和ポップスってなに?昭和歌謡とは違うの?と思った方もいたんじゃないでしょうか。

私が昭和歌謡ではなく、「昭和ポップス」と定義した理由は2つあります。

1つは、私やまわりの音楽好きが好きなジャンルを厳密に定義する言葉がなかったことです。
昭和の音楽好きの若者は、フィンガー5、沢田研二さん、吉田拓郎さん、THE ALFEE、聖子ちゃん、チェッカーズ、渡辺美里さん…などなど、歌手や曲のジャンルによる境界線をつけずに、よいものはよいと聴いています。このころのヒット曲(必ずしもヒットしていなくても)を好きな若者は、曲それぞれの印象は違っても、「この時代のものっていい曲多いよね」というところがなぜか共通しています。

このとき「昭和歌謡が好き」という言い方をすると、昭和64年間すべてを指すことになってしまい、戦前・戦後の音楽も含まれてしまうこと。もちろんその頃の音楽にも素晴らしい楽曲はたくさんあると思います。しかしながら、私(やたぶん他の友人)が注目しているのはテレビ(特にカラーテレビ)が普及し、歌が「視聴」するものになってからの音楽です。聴かせるだけでなく、魅せるものにもなってきたことで、歌の世界観を耳だけでなく目で、具体的にはパフォーマンスやセットでも表現するようになりました。そして、世界各国の音楽の要素を昭和歌謡に取り入れて日本独自のものに進化させていきました。こうして日本の音楽はアイドルソングあり、演歌あり、フォークあり、ロックもありのガラパゴス状態となります。

そしてその結果、どのジャンルにも属せないような歌や歌手がたくさん生まれました。その時代が1970〜1980年代だと思っています。

(もちろん60年代にも、ザ・ピーナッツさんのようなポップス要素を取り入れた素晴らしい楽曲は多数ありますが、メインの期間として定義させてくださいm(_ _)m)

そして平成に入り1990年代になると、各音楽番組の終了、美空ひばりさんの死去、バンドブームの到来、小室哲哉さんの台頭などから、音楽シーンは一気に変化していくこととなります。

つまり、この音楽の黄金時代と呼ばれた70〜80年代の音楽は他の時代にない、しかも世界のどこにもない音楽だったんじゃないでしょうか。それなのに、この時代の音楽には名前がついていないということに、違和感を持ったということが一つの理由です。

2つめの理由は、森昌子さんと山下達郎さんを昭和歌謡のひとことではくくれないからです。

森昌子さんは昭和歌謡寄りの曲が多いかも知れないけど、達郎さんは多分違う。でも、聴けば昭和の曲だとわかるノスタルジーがあるのは確かです。
あたらしい名前は、この二人をまとめても違和感のないものでなければいけないと思っていました。

そう考えると、「昭和」であり、かつ、日本の音楽と世界の音楽が融合し化学反応を起こした「ポップス」が中心だった時代の音楽。これを指す言葉として僭越ながら考えついたのが、「昭和ポップス」でした。

今までなんと呼んでよいか分からなかったジャンルに名前がつけられることで、より多くの人に届くはずだと信じています。

それではイントロ・ベストテンです!

昭和ポップス・イントロベストテン!

第10位 「君は1000%」

歌:1986オメガトライブ
作詞:有川正沙子
作曲:和泉常寛
編曲:新川博
発売:1986年5月1日

日本テレビ系列「新・熱中時代宣言」の主題歌だった曲です(主演:榊原郁恵)。

まず「夏が来た〜〜〜!!!」と言いたくなるようなイントロですよね。杉山清貴さんという超・偉大なボーカルからカルロストシキさんにボーカルが変わったあとの一発目の曲という、かなり厳しい状況の中、その不安を吹き飛ばすかのような始まり方です。
シチュエーションとしては、夏休みに日々の喧騒から逃れて男女2、3人ずつくらいで海までドライブしていて、もうすぐ到着というタイミングで、トンネルを抜けたら海がブワァーッと広がっていたときの開放感と爽快感と高揚感・・・!みたいなものを感じます。(わ、私はね、、)

これを選んだ理由は、私がよく行く歌謡曲バーにて「君は1000%」のイントロが流れると「▂▅▇█▓▒░(‘ω’)░▒▓█▇▅▂ウワアアアァァァ」状態になる方を何人も観ていたからです。ちょっと世代が違うと「そんな曲あったね」となるみたいですが、ちょうど青春時代とかぶってる方は悶絶されることが多いようです。

▼「君は1000%」に関してはこちらで気持ち悪めにがっちり考察していますので良かったらご覧ください!

【1986オメガトライブ】カルロストシキの「君は1000%」大逆転劇

第9位 「そして僕は途方に暮れる」

歌:大沢誉志幸
作詞:銀色夏生
作曲:大沢誉志幸
編曲:大村雅朗
発売:1984年9月21日

映画の最後で、ついに恋人が部屋を出ていった。そのドアがパタンと閉じた直後に、エンドロールとともに流れてきそうなイントロ。「あああもうやめてくれ!!!」と鬱になるタイプの映画。部屋に残された自分ひとり、もうそのドアが開くことがない虚無感を噛み締めながら聴いたら、たぶんしばらく現実には戻ってこれなくなります。

この曲って、最初の歌詞と最後の歌詞が同じで「見慣れない服を着た 君が今出ていった」なんですよね。それがシンドい。1回目は事実として、2度目は自分らにその出来事をわからせるために自分の中で反芻しているように感じます。しんとした部屋の中が目に浮かぶ。つらい。シンプルに人に深い傷を負わせる曲です。

「そして僕は途方に暮れる」大沢誉志幸 歌詞

第8位 「夢芝居」

歌:梅沢富美男
作詞・作曲:小椋佳
編曲:桜庭伸幸
発売:1982年11月21日

最初の「カンッ!」の音は人間・池田富美男(本名)から女形役者・梅沢富美男にスイッチが切り替わる瞬間。どんなことがあっても、役者は拍子木が鳴った瞬間に自分自身を忘れ、役者の顔になる。そんな決意や覚悟を感じる、背筋のぴんと伸びるようなイントロです。

その覚悟は芝居への覚悟でもあり、(歌詞中で芝居と恋を重ね合わせていることもあって)一度愛してしまった男へ愛を貫く覚悟のようにも感じます。もしこの愛が失敗に終わったら、切腹でもしてしまうんじゃないかと思うほどの凄みがあります。
この曲ほど、代替不可能なキャラクター性を生かした曲は、古今東西問わずなかなかないんじゃないでしょうか。

ちなみに最初の拍子木は、梅沢富美男さんご自身で叩いたそうです。
「男と女…あやつりつられ」梅沢富美男が語る大ヒット曲『夢芝居』秘話

でもって、カラオケで歌うと出てくるPVの梅沢富美男さんの女形がふつくしい。惚れました。今度歌ってみてください。

第7位 「ルビーの指環」

歌:寺尾聰
作詞:松本隆
作曲:寺尾聰
編曲:井上鑑
発売日:1981年2月5日

テーマ的には「男の強がりと未練」というかなり古風なものだけれど、それとは真逆の都会的なメロディがミスマッチでいとおかしです。

これ思うに、「女に振られた悲しい男の未練」みたいな演歌的恋愛じゃなく、「たぶん、お互い愛し合っていたけどなにかの運命の歯車のせいでうまく行かなかったカップル」だと思うんですよね。だって、ルビーの指環を歌うあの寺尾聰さんの佇まいからして、誤解を恐れず言うとあんまり恋人に指輪とかベタなものを渡さなそうな方じゃないですか。ちょっとドライな大人の恋愛というか。その方が「あれは8月まばゆい陽の中で 誓った愛の幻」ですよ。ちょっと冷めた目で恋愛を見ていたような方が、唯一照れくさいくらい本気になった恋。私は「ルビーの指環」ってそういうストーリーの気がするんですよね。

そういう本当の幸せを一度でも掴んだカップルにおいて、一方的に片方が嫌われ振られることってあるでしょうか?漫画の読み過ぎかも知れないけど、女性側が誰かを守るためだったんじゃないかとか、ほんの少し信頼できない出来事がおこってしまい、どう接していいかわからなくなっていくうちにどんどん好きでいることが辛くなってしまったとか(完全に漫画の読み過ぎ)。。

なにかしら、大人ならではの不器用になってしまう理由があったんじゃないかなって思っています。

ざっくり分類すれば「男の未練」な曲でも、サウンドがしみったれず、大人っぽく洗練された哀愁を放っているおかげ(と寺尾聰さんのかっこよさ)で、演歌ではなくエモーショナルな都会的恋愛を想像させることができているのではと思います。もちろん歌詞のワード選びのよさも絶妙です。

歌手・歌詞・作曲・編曲、それぞれが組み合わされて初めてストーリーが完成する昭和ポップスの素晴らしさをまさに体現する曲ですね。

あっ・・・イントロについて全然喋ってないですが、そういう気持ちでイントロを聴いてみると、救いようのないバッドエンド感(それなのにかっこいいのが不思議)が半音ずつ下がっていくベースに表れています。
これを聴いたらもう「ルビーの指環」のイントロはこれ以外ありえない、と思うようなイントロ。「これ以外ありえないイントロ」というのはイントロベストテン選曲の際の判断材料にしていました。

第6位 「チェリーブラッサム」

歌:松田聖子
作詞:三浦徳子
作曲:財津和夫
編曲:大村雅朗
発売日:1981年1月21日

番組でも言いましたが、まさに松田聖子が「何もかも目覚めてく」曲です。メロディーだけ聴いてみると、実はそこまで音域の変化もないし、聴かせどころになるような高音があるわけでもない。

カラオケで自分で歌ってみたら、なんかスカスカで全然かっこよくない曲になっててびっくりしました。疾走感がすごい曲という印象でしたが、それはアレンジありきの印象だったんですね。聖子ちゃんの伸びやかな声も相まって、曲全体の躍動感は素晴らしい。そしてそういうアレンジも計算されてメロディーが作られているんだろうかと思うと、作家陣がひたすら怖いです

このアレンジによる疾走感と躍動感のおかげで、このイントロを聴いただけで聖子ちゃんが向かい風を浴びながら、聖子ちゃんカットのフワフワにたっぷり風を受けながら階段を降りてくるようなイメージが浮かびますね。まさに、これからやってくる「松田聖子伝説」の幕開けみたいなものを感じざるを得ないドキドキが詰まったイントロ。

それから間奏のギターも、風に向かって一人立つ聖子ちゃんの孤高の雰囲気、だれも寄せ付けない、追随を許さない雰囲気がビシバシ感じられる。アレンジが曲の方向性を大きく決めているという象徴のような一曲です。

第5位 「少女A」

歌:中森明菜
作詞:売野雅勇
作曲:芹澤廣明
編曲:萩田光雄
発売日:1982年7月28日

明菜ちゃんのデビュー曲は「スローモーション」ですが、「ツッパリ中森明菜」のデビュー曲はこれです。特にイントロのギターのフレーズがすばらしく、ついつい口ギターがしたくなること必至!!また、イントロのオルガンのグリッサンド(この曲の一番頭の、オルガンを低音から高音まで滑らせて弾いている音)がとにかく素晴らしい役回りをしていて、これがたとえば直でギターから始まるのと、オルガンから始まるのでは、聴いている側の耳構えが変わる

このグリッサンドが聞こえるからこそ、ギターが入ると「キター!!」感があって思わず身体に力が入るのだ!!曲のつかみとして計算していれられたものだと思う。

第4位 「Romanticが止まらない」

歌:C-C-B
作詞:松本隆
作曲:筒美京平
編曲:船山基紀、C-C-B
発売日:1985年1月25日

サビより印象的なイントロが、さすが船山基紀さんというアレンジ。「ッテッテッテッテッテレッテレッテーッテッテーン♪」と歌わずに入られなくなる(ドラムを叩きながら)。シンセの軽さ(ちょっとした安っぽさ)みたいなものが妙に心地よく、お決まりの陳腐な展開なのについつい観てしまう恋愛ドラマのような大衆性と中毒性がある。こういうことを狙ってやっているであろう船山さん、本当に底が知れないお方です。

第3位 「抱きしめてTONIGHT」

歌:田原俊彦
作詞:森浩美
作曲:筒美京平
編曲:船山基紀
発売日:1988年4月21日

イントロの頭の「ンダッタラ〜♪」の「ン」のつかみがなければまったくイメージが変わっていたと思う。聴いていると自然に「ン」にぐっと力が入るのがすごい。
フジテレビ系ドラマ「教師びんびん物語」のテーマ曲ですが、この「ン」で絶対にドラマの世界にグッ!!と引き込んでやろうという、船山基紀さんのプライドが凝縮されている気がします。

ちなみに、田原俊彦さんはデビューからずっと、アイドルながらスイング、ジャズ、ビッグバンドなど様々なジャンルの曲にチャレンジしていました。しかしながら伸びしろのある歌唱力()や甘いマスクが邪魔をして、楽曲の良さになかなか気づかなかったという方もいると思います。本当にびっくりするくらい何もかもレベルが高いです。

ちなみに私は「NINJIN娘」が吐くほど大好きです。とくにアウトロ(終わり方)が好きで、アウトロすごい昭和ポップスランキングでは、わたしの中でベスト1です。
普通こんなのアイドルにさせないよー。曲のレベルが高すぎるよー!!

彼のプロデュースをした方(おそらくディレクターの羽島亨さん)はトシちゃんの運動能力・リズム感・努力家・生粋のパフォーマー気質など、彼の魅力というものを存分に熟知したうえで、手を変え品を変え、トシちゃんの良さをどう輝かすべきかと検討されていたのだと思うと・・・一生足を向けて寝られません。

第2位 「異邦人-シルクロードのテーマ-」

歌:久保田早紀
作詞・作曲:久保田早紀
編曲:萩田光雄
発売日:1979年10月1日

文句なし。謝肉祭かなにかのような派手な始まり方(最初の4小節)、かと思ったら川の流れるようなおおらかなフレーズ。不安と安らぎの弛緩、メリハリの付け方に非の打ち所がないです。

歌が始まってからもAメロと「空と大地が〜」にて不安とやすらぎの応酬。情景を想像させ、ついその世界観にひき込まれずにいられない。久保田早紀さんもノリノリで歌うわけじゃなく、ちょっと物事に対して冷めたような、距離をおいたかのような諦念の漂う歌い方も、曲中の主人公の抱く孤独を想像させます。

第1位 「魅せられて」

歌:ジュディ・オング
作詞:阿木燿子
作編曲:筒美京平
発売日:1979年2月25日

地殻変動と気候変動が同時に起こっているかのようなイントロがすごい。最初の高音のストリングス「テテテ・テテテテ・テテテテテレテテーン♪」が初期微動、次の低音のストリングス「デデデ・デデデデ・デデデデデレデデ―ン♪」が主要動。これを2回くりかえしたあとの「テーテレレーン♪テーテレレーン♪」は大波小波、大波小波。そして海が割れて歌が始まるのよ!!(というイメージ)
イントロだけでなにが起こるんだ!?と思わせる壮大なスケール、そして不安の煽り方はすさまじい。

さらには歌が始まったかと思いきや「南に向いてる窓を開け…」ときたもんだ。地球規模の気候変動をイメージさせたかと思ったら、家の中の窓とかカーテンとかって、もう奥行きがすごい。視野の大小の切り替えが天才的。

始まって数小節で阿木燿子さんと筒美京平さんの手の内で翻弄されていることを感じます。荘厳な自然に対する人間の無力さを仰ぎ見させられるような曲。アレンジと歌詞はどちらが欠けてもこの壮大な楽曲は成り立たなかったはず。文句なし1位です!

余談ですが、ジュディ・オングさん、ほんとに顔が小さかった………おったまげましたし、感動でした………。

マツコの知らない世界「昭和ポップスの世界」で流れた曲プレイリスト

流れた曲、知らなかったけどちゃんと聴いてみたいなぁ〜と思ってくれた人がすこしでもいてくれたらいいな〜ということでプレイリスト作りました。よければ使ってください!
なお、「抱きしめてTONIGHT」「瞳の誓い」はサブスクにはありません。あしからず。

Apple music

Spotify

まとめ

案外イントロ以外も書いてしまいました・・・本当は入れたかったけど泣く泣く諦めたイントロもたくさんありましたので、また紹介できれば。。Twitterもやっていますのでみなさんのマイ・ベスト・イントロも教えて下さい!

補足:今回の放送はParaviやTVerでの配信の予定はないようです。多分あると思うとか言ってしまった人ごめんなさい。もし再放送があればTwitterにてアナウンスします!

さにー@昭和ポップスの世界|Twitter

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